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Channel: バージニア労働者
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社会の掟(前編):ダニーの異動

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ケイエスは毎日の通勤で、クラッシックを静かな音で流している。


そういう日は、たいてい何か考え事をしていることが多い。


集中して聴くことは滅多にないが、たまにとてもいい感じの曲が流れると
後でまた聞いてみたいと思い、情報を携帯のカメラで撮っておく。




今日は、考え事だらけの一日。


*************************



今朝、ブラッドのオフィスで、例のHuddle(直立で行う簡単なミーディング)があった。
「今日はまず、Bitter & Sweetなアナウンスメントがあるんだ。」


みんなちょっとざわつく。
ほの苦くて、甘いアナウンス?ちょっと興味深い。


「今までずっと一緒に頑張ってきたダニーが、来週の金曜日を以てプリントセンターに異動が決まったから。
寂しくなるね。ダニーの後任者が決まるまで、またみんなには負担が増えるけど、まあよろしく。」


ダニーが去るのは残念だけど、ダニーにとっては新しい出発なので、Bitter & Sweetということか。


アメリカでは、会社内で常にJOB OPPORTUNITYといって、雇用のチャンスがある。
応募資格に当てはまるのなら誰でも応募ができるので、みんな常にそのサイトをチェックしているし、
私もそのシステムを利用して今の仕事にありつけたのだった。


ダニーもその経由で次の職をゲットしたのだろう。


つい最近、一緒に仕事をしていたブランドンが、同じ部署でもスタティスティックス(私がいる部署)からファイナンシャルチームに異動したときも
彼の後任者が決まるまで、残った私たちが彼の仕事を分散していて、やっと後任者が来て落ち着いたと思った矢先のことで
ダニーの異動のことよりも、また仕事が増えるし今度はどんな仕事が任されるんだろうっていう、うんざりした気分でいっぱいだった。
当のダニーは、いつにも増して、何にも興味がないみたいな顔をしていた。


私もきっとHuddleの時はあんな顔してるんだろう。


Huddleがすんで自分らのデスクに戻ってくると、ダニーのキューブでは同じキューブのデミ嬢やらエイドリアン、
その他の同僚が口々に『おめでとー!いつの間に転職試験受けてたの?』とか言っていた。
「次の職種も今と同じアナリストだけど、今度はプリントセンターのファイナンシャルチームなんだ。」
と言うダニーの声が聞こえた。


私は時間内にやっておかないといけないレポートがあって、お祝いの言葉を掛ける間もなくすぐにヘッドフォンで音楽を流し始め、仕事に取り掛かった。
おめでとうは後でも言える。


お昼過ぎになり、いつものようにデミ嬢がランチ行こーって私のキューブにやってきたんだが、
「今はちょっとコーヒー飲みたい。はよ出かけよう。」と言うその顔が、めっちゃ真剣になっていて、
「なんか牛を丸ごと食べたいみたいな空腹な顔しとるじゃん。」と笑って言ったら、「そんな笑いごとじゃない。」って言う。


「私ね、さっきダニー本人から聞いたんだけど」


もう、嫌な予感しかない。


「ダニーの異動ってね、あれ左遷だよ。」



<つづく>


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